カンボジア・村の子どもと開発僧―住民参加による学校再建報告
清水 和樹
カンボジアの教育事情を知ろうと思ったらこの本がおすすめ。
書かれたのは少し前だが、今でも田舎の方では状況は変わっていない。
NGOのスタッフとしてカンボジアでの学校建設に取り組んだ著者の経験や現地の子ども達、先生、子ども達の親へのたくさんのインタビューが載せられ、現実がよく分かる。
なぜ公立の学校は学費が無料なのに、子ども達は学校へ行かないのか?
行かないのか?
行かせないのか?
その答えをとてもよく分析している。
ポル・ポト政権の大虐殺で多くの知識人が殺されたカンボジアでは、明らかに人材が不足している。
国が発展する為には、どうしても教育が重要だということは、誰もが認識することだが、どうやって教育を提供するのか?
住民参加型でより持続的に自立して学校建設、運営がなされていくにはどうしたいいのか?
その格闘した経験が書かれており、とても興味深い。
また効果的な支援に向けて、カンボジアで伝統的に尊敬され、リーダーシップを取ることができる僧侶との協力は、仏教が果たしてカンボジアの開発・平和の達成にいかに役立つのかということを示してくれる。
それは必ずしも簡単にうまくいくものではない。たまたまリーダーシップが取れ、尊敬される、積極的な僧がいたから・・・ということもある。
仏教僧のスタディツアーに、参加した僧侶の言葉。
『僧侶だけが何かをしようとしてもだめで、村人、教師、地方政府が協力し合わなければうまくいかないということが良く分かりました。』
これは簡単ではないということも書かれている。
この本の中でもう1つ興味深いのは、仏教の市民運動への影響だ。
カンボジアでカリスマ的な人気をもつマハ・コーサナンダ師やキムテン師が率いた非暴力の立場でクメール・ルージュと政府軍の即時停戦と話し合いを訴えた平和の行進。
1992年、パリ和平協定が締結され、UNTACが展開することになったとはいえ、実質上まだ内戦状態だったときに第1回目が行なわれた。2回目も1993年の総選挙前。
出発直前に集まっていた村が戦闘に巻き込まれたことも・・・。
3回目は、千人を越える人が参加。
2005年にテラ・ルネッサンスがプロジェクトを行なったバッタンバン州バヴェル地域近くでクメール・ルージュの攻撃をうけ、僧侶ら2人が死亡したという。
こうした犠牲を払っても、行進のまえに僧侶達が語った
『真の平和が達成されるなら、死を厭わない』
という重い言葉。
コーサナンダ師は、クメール・ルージュのキュー・サンパンにも尊敬され、ナンバー3のイエン・サリもパイリンで会い、ともに寺院で祈りもあげたという。
ポル・ポト政権時代にあれだけ仏教を弾圧し、寺院を破壊、僧侶を虐殺したクメール・ルージュの幹部たちが、尊敬し、一緒に祈りをあげる・・・、
どれだけコーサナンダ師が影響力をもち、そして仏教が結局カンボジア人のなかに深く入っていたのかが分かる。
最後に、
”Step by Step”
コーサナンダ師の言葉。
すこしずつやっていくことが重要かもしれない。